超初心者の為のCPA講座




 
【REG】

1:個人所得税 


〜はじめに〜

 恐らく多くの方がまず最初に個人所得税からREGの勉強を始めるでしょう。そしていきなり「???」と思うでしょう。次に分かってきたような気がしてきたら、今度は覚える事が多すぎてパニックになるでしょう。それが過ぎれば、似たような項目が多くて頭がこんがらがって来るでしょう。私のような税に対して何の知識も無い人間がいきなりこの勉強を始めるとほぼ間違いなくこうなるはずです。誰もが通る避けては通れない道なので、この「パニック」とか、「ごちゃごちゃ」という状態が来たら焦らず「あ〜、レベルが上がってきた証拠だな」位の感覚で捕らえればいいと思います。
 このページを見ている方は、この税法という科目に対して、これから一体自分はどれだけの勉強をするのか皆目見当が付いていないと思います。もしかしたら一体どんな勉強をするのか、という事も。(私はそうでした)
 まず、勉強を始める前に「これから始まる個人所得税の項目は、その後やる法人税やパートナーシップ等全ての税法の大元となっている」という意識を持ちましょう。所詮個人所得税、法人税等と名前が変わっていますが、それは「誰が」払うかが異なるだけであって、支払先は国である事に違いはありません。この税法の勉強を理解するにあたって共通する極めて重要なイメージは、

「税金をもらう立場(=政府)に立って物事を考えてみる」

という事です。ほぼ全ての局面において、この立場に基づいて考えればすんなりと理解できる事が多いです。是非頭に留めておいて下さい。
 ではその考え方に立ってみると、個人の所得税の支払い申告書のルールと、法人の所得税のルールが異なれば、IRS(アメリカの税務署みたいなイメージ)の担当者は2つのルールを理解しないとならない事になります。これは非効率ですよね?なので、基本は個人所得税のルール、これを若干マイナーチェンジしているのが法人やその他の税務申告書だと考えればいいです。
 という事は、逆に言えばここを理解出来ないままでいると、法人税やパートナーシップの理解も出来なくなるという事になります。しかしまた更に逆に考えると、個人所得税で理解できない部分を抱えながら法人税の勉強をする内に「あ、個人の場合はこういう事を言ってたんだ」とひらめく可能性もあるって事です。相互補完しあえる関係なので、結局大事なのは「勉強したけど○○の部分が今ひとつわかってないなぁ・・」と理解しておく事だと思います。「どこが分からないかが分かる」ようになっておきましょう。

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TAX STRUCTURE を知ろう

 さて、いよいよ個人税法の勉強に入ります。私が勉強していてまず「???」と思った理由は、機械的に「これは非課税、これは課税、これはAGIの7.5%まで引ける」などと分かんないまんま授業を聞いて、分かんないまんま問題を解いて、分かんないまんま何となく先に進んでしまったからです。まず何よりも大切な事は税金計算におけるシステム、税金の構造を知る事です。私の場合はこの構造というのを全く意識せずに勉強をしてしまいました。ある程度勉強を重ねてこの構造が見えた時、その瞬間に理解度が数ステップ上がった感覚を覚えました。
(余談ですが、このある種突然見えて来る「つながり」とか「ひらめき」等というのはCPAの勉強を進めていく中でままあります。その瞬間パズルのピースが繋がるような感覚です。これが見えた時は結構快感ですよ。今まで解けなかった問題もサラサラと解けるようになるのです。
 余談ついでに、アメリカでは日本と違い、ほぼ全ての国民が確定申告をします。ですから所得税の申告書作成という作業は日本以上に身近な問題だそうです。)

 さ、イメージ作りからスタートです。↑でも書いた通り、とにかく国の立場に立って考えてみます。どこの国もそうですが、とにかく税金は多く取る!!つまり税収は増やす方向で考えてきます。イメージは、「お前のものは俺のもの」。もうジャイアンです。アメリカ市民が得た財産の一部は全てアメリカ政府に帰属する、と考えましょう。ですから、例えばあなたがウェイターでお客からチップをもらったり、株で儲けてキャピタルゲインが出たりしたら強制カツアゲです。所得は全て報告しましょう。そこで出てきた全ての所得(例えば給料+受取利息など)というのがスタートラインとなります。(
Gross Income
(ここで「全ての所得は要報告」と書きましたが、当然種々の理由から所得に含まなくていい項目もあります。非常に重要な部分ではありますが、今の段階では考える必要はありません。イメージは全て報告!です。)

 次にその総所得から控除出来る項目というのがあります。典型的なものがAlimonyと呼ばれる離婚扶助料でしょう。Alimonyとは、離婚した元妻(夫)に対して支払うお金です。つまり給料から自動的に引かれる、自分で使う事は出来ないお金です。その意味では税金と同じようなものだとイメージして下さい。例えば未婚で年収10万ドルのAさんと、バツ1で妻に5万ドルを年間支払ってる年収10万ドルのBさんに同じ額の税金を課したとすると、あまりにもBさんが可哀相でしょ、という国からの温情です。他にも会社の命令で転勤したのに会社が支払ってくれなかった引越し費用など、イメージ的には「自分が使いたくって使ったお金じゃ無い!!」という項目の金額はここで控除する事が出来ます。
 前述のGross Incomeからこれらの控除項目を引いて出た金額の事をAdjusted Gross Income、
略してAGIと言います。ここでパラっと個人の税務申告書(1040)を見てもらいたいのですが、Adjusted Gross Incomeという項目は、申告書1ページ目の一番下に位置しているはずです。・・・・見つけれましたか?一番下にあるので当然と言えば当然なのですが、AGIには一本太い線が引かれてますよね?アメリカ人はこれを「The Line」と呼んでいるそうです。この金額が全ての基準となる為に「The」と付けて特に呼んでいるのです。先ほどのAlimony等の控除項目は、その基準点より前、税務申告書の表記上ではその線の上で引かれているために、Above-the-line Deductionと呼ばれています。・・・そのまんまですね。
 
 以上を整理すると、税金計算の構造上
1 Gross Incomeで全ての所得を包み隠さず報告する
           −
2 Above-The-Line Deduction として認められる項目は、総所得から差し引いてもらう

=AGI、つまり税金計算の根拠数字とする、という事です。・・理解出来ましたでしょうか?


では次へ進みましょう。

 この「引けるもんを引いて手を加えた総所得」=AGIを元に第2段階の始まりです。基本的にこのAGIに対して税率がかかるのですが、
ここから更に控除項目があります。
 まずは控除する金額を自分で計算するか、あらかじめ決まった金額を控除するか選択します。(
standard deduction かitemized deductionの選択
 納税者には、(その家族構成に合わせて)最低でもある一定の金額はAGIから控除できる権利があるのです。この金額は毎年変化(物価水準に合わせて上下する)するので、何ドルとは言えないですが、ま、大体5000〜10000ドル位は引けると思ってください。ちなみに2004年現在では4850ドル(独身者の場合)です。納税者がこの金額を控除する事を選択する事を
standard deductionと言います。何も考えずにAGIからこの決められた金額を引きましょう。
 では、standard deductionを選択せずに自分で控除出来る金額を算出する場合はどうでしょうか?当然の事ながらこのAGIから控除出来る項目と言うのは決まっています。(詳細後述)それらを計算して出た金額がstandard deductionの金額を超えていた場合には、納税者はこっちの数字を選択して控除する事となります。これを
itemized deductionと言います。CPA試験において、このitemized deductionが問題に出ないという事は100%あり得ないと言っていいと思います。要暗記項目ですので、頑張って覚えましょう。
 ここまでを整理すると、

(1)AGIをとにかく算出
(2)itemized deductionの金額を計算してみる
(3)itemized>standardならitemizedの金額をAGIから控除、逆ならstandardの金額を控除する
(4)次のステップへ

 です。イメージ出来ますでしょうか?

 ここまで来たらあとはもう少しです。
 今出た金額から、更に納税者の家庭環境(=家族構成)に応じて追加で控除する事が出来ます。具体的には独身者だったら○○ドル、結婚して奥さん(旦那さん)と一緒に申告するなら○○ドル、と言った具合です。これは
personal exemptionと言って、各状況(独身、結婚者、未亡人などなど)によって金額は異なります。自分に有利な(=最も多く控除出来る)税額を選択して控除します。ちなみにこの金額に関しては覚える必要は無いと思います。独身者なら大体3000ドル程度、というイメージで大丈夫だと思います。


 
ここまで諸々控除して出た金額に、やっと個人の所得税の税率を掛け合わせます。そうして出てきた金額が納税額となるのです。イメージ出来ましたか?(実際にはここから出てきた税額に対して更に控除するものがあるのですが、今はまだ考える必要は無いと思います。)

 さ、これで税金計算の構造が掴めました。当たり前の事なんですが、結局
最初にプラスになるものを算出して、そこから何回も控除して最後に税金を出す、という構造になっています。この税法で聞かれる事というのは、とどのつまりは
1:課税(プラス)項目は何か?
2:非課税(本来ならプラス項目なのに、あえてプラス項目として報告しなくて良い)項目は何か?
3:控除項目は何か?
 の3点しかありません。これをしっかりと認識する事が大事なのです。

 では、授業でもよく言われている「各項目をしっかりと理解する」とは具体的にどういう事でしょうか?税法においてこの言葉の意味は
「控除項目の内容を理解するという事だと思います。前述の税金構造の欄でも分かるように、総所得(Gross Income)からスタートして最低でも3ステップの控除を経て税金算出の元金額に辿り着きます。この控除項目が「一体どの段階で考えないとならないものなのか?」というのを理解した上で暗記する事が一番重要だと思います。これが結局の所、Tax structureを知る、という事を意味するのです。

 恐らく授業では一気にATL-Deductionを教えた後にitemizedを教えると思います。そしてPersonalに入り、
「はい、これでオッケーですよね。では次に行きます」
となるでしょう。教えられる側として、この税金計算の構造を知らないと、なんとなーく聞いたまんま流してしまいがちになります。そこで問題を解くと解けない、という事となってしまうのです。

 長々と書いてしまいましたが、とにかくここが最も重要なのです。この税金の構造を必ず最初に頭に入れてから授業を聞いて下さい。理解度は相当異なると思います。例えばFARを勉強し終えたばかりのアナタ!「医療費」、「引越費用」どちらも一般管理費の項目でしょう。会計上はどちらも収益から控除する費用項目で差異はありません。しかし税法上はこの2つの項目は控除する場所が違うし、控除出来る金額というのも違います。税金計算の構造をしらないままで説明を聞くと、、、、、私のように訳分からなくなってパニックに陥るでしょう。

 自分で分かるように税金計算の構造図を書いて、手元に置いておきましょう。

 ・・・以上を見た方で「なーんだ、長々と書いてるけど、それって1040を手元に置けって言ってる事だろ!」と突っ込みを入れたアナタ!素晴らしいです。その通りです。これは結局1040について書いてるだけなのです。よく予備校の先生が「1040を見返すように」と言うのは結局各控除項目がどの段階で引かれてるかを確認しろ、という事なのです。典型的なグータラ受験生である私は「あー、はいはい。こんな英語だらけの申告書見たってわかんねぇよ」と思いながら一応チェックペンとかを走らせて、結局分からずに泣きを見ました。皆さんは私のようにならないで下さい。その為には今の税金の構造を一度紙に自分なりに書いてみた後で、1040を見て下さい。総所得 − ATL Deduction・・・・と同じような構造になってる事に気付く事でしょう。

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暗記を始める前に

 さ、税金構造を知ったら後はひたすら暗記です。暗記ばっかりはもう覚えるしかありませんので、私はこの講座で暗記項目を全て書くつもりはありません。ご自身で自分の好きな方法で覚えてください。
 ただ、暗記もただ闇雲にやればいいというもんでも無いと思います。そこにある理由を系統立てて整理し、その項目を暗記すれば飛躍的に量・記憶が持続する期間は伸びると思っています。あまりいい例ではありませんが、一例を挙げてみましょう。
 例えば下記の無作為に並べられた言葉を暗記して下さい。

ブリジストン・フォード・フェラーリ・タイヤ

・・・これらは全てF1に関する言葉です。左からタイヤメーカー、エンジンメーカー、チーム名、タイヤとなっています。この中身を知った上でもう一度見ると、例えばブリジストンとタイヤを並列に考えるのはナンセンスだと言う事に気付くでしょう。(タイヤと並列になるのはエンジンなどであって、そのメーカーはあくまでタイヤに従属する関係であると言う事です)
 REGにおける暗記も、その背景を知らないと、こんな風にナンセンスな暗記をする事となってしまうのです。私も暗記をしながら、「これは一体どこに使うべき項目なんだろうか?」と思いながら覚えようとし、そしていつも失敗していました。系統立てて覚える、これは結局税金構造を知る事とかなりイコールの意味なのですが、とにかく背景を理解して覚える事が大事だと思います。

 また、規則には必ず例外があります。例えば先の例ですとフェラーリ、言わずと知れたF1界を代表するチャンピオンチームであり、そうであるが故にタイヤ以外は全て自分の所で作っています。チーム名であり、エンジンメーカーでもあるのです。REGにおける暗記項目でも、こういった例外やルールの違いがあり、かつその違いが試験で問われたりするのです。

ですからここでは(私が勝手に考えている)系統、イメージ、または例外を中心に紹介したいと思います。


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